機械安全の法律・規格と設計手法

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5. 製造物責任(PL)法(その5)|(定義) 第二条|事故や労働災害は被害者のみならず、設計者・製造者・販売者の皆を不幸にします。

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私は、労働災害を防ぐためには技術者は、 製造物責任を知らなければならないと考えています。法の解釈や法理論を説明するのではなく、PL訴訟のに係わるような製品の事故や労働災害を未然に防ぐためにはどうすれば良いのかを製造物責任法の規定をベースに説明します。

この法律の定義、言い換えると、技術者が知っておかなければならないキーワードについてみていきましょう。

キーワードは「製造業者等」です。

 

平成六年法律第八十五号
製造物責任法

(定義)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二 自ら当該製造物の製造業者として当製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

 

この製造物責任法では、製造業者」が賠償の責任を負うことになります。

さて、この責任を負う「製造業者」とは、誰のことなのでしょうか?

 

1.業として製造、加工した者

  • ”業として”とは、細かな定義はありますが、個人であれ企業であれ「事業として」と理解しておけば問題ないと思います。事業として製造物を製造や加工する者が損賠賠償の責任を負う者になります。
  • では、実際に製造を行っていない、設計事務所の場合は、設計や加工を行っていないので、この法律の製造業者ではないので責任は無いのでしょうか? 法律をそのまま読めば、直接には製造物責任の対象にならないと解釈できます。しかし、明らかに、設計事務所に欠陥の過失がありそれが原因で損害が生じたのならば、PL訴訟を受けた製造業者が、その業務を発注した設計事務所(設計者)に損害賠償請求を起こすことになると思われます。

2.業として輸入した者

  • これは、消費者が、海外の製造業者を訴えることが難しい点を考慮して、日本に在住する輸入者を「製造業者」として、損害賠償の責任を負わすことにしているものです。たとえば、大手の国内小売業者が海外製品の欠陥に対してリコールを行っているのもこのためです。

3.製造物にその氏名、商号、商標その他の表示した者 

  • 自らが製造、加工または輸入を行っていないとしても、企業の名称・略称・通称やブランド名が製品に記載されている場合は、その記載されている販売業者も製造物に対しての責任者になるということです。たとえば、OEM製品で製品の販売企画に関わっているのみで、製品の設計や品質や安全に対して関わっていないとしても、製造物責任から逃れることはできないということです。

4.実質的な製造業者と認めることができる者

  • 販売業者の経営多角化で製品の設計、構造、デザインに実質的に関わっているとみられる場合、例えば、OEM製品において「販売者」として表示されていたとしても、実際には製造にも関与していた事業者は、実質的な製造業者として製造物責任から逃れることはできないということです。

 

結局、すべての関係者が責任者になります。

日本の場合は、例えば、販売業者、販売業者、賃貸業者、リース業者、運送・倉庫業者は、法で定めた「製造業者等」には該当しないことになっています。しかし、海外では異なり、例えば、米国では、関連したこれらの事業者も責任者になってしまうのです。

私の知っている海外の製造物責任訴訟の場合は、製造業者、設計業者、設置・修理業者など、すべての関連する企業に対して訴訟が起こされ、被害者のみならず、設計業者・製造業者・販売業者・設置・修理業者のみんなが不幸になりました。 

 

<その6に続く>

 

 

MSDコンサルティング