機械安全の法律・規格と設計手法

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6. 製造物責任(PL)法(その6)|(製造物責任) 第三条|PL予防とPL防御は一体で取り組みましょう

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私は、労働災害を防ぐためには技術者は、 製造物責任を知らなければならないと考えています。法の解釈や法理論を説明するのではなく、PL訴訟のに係わるような製品の事故や労働災害を未然に防ぐためにはどうすれば良いのかを製造物責任法の規定をベースに説明します。

この法律の、メインの部分の第三条を見ていきましょう。

 

平成六年法律第八十五号
製造物責任法

(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

 

 

この第三条を簡単にいうと。

「製品を作るのに係った人は、その製品の「欠陥」で 怪我などが起きたとは、その損害の賠償をしなければならない」という製造業者の責任を示しています。

 

この法律の特徴は、製造業者の過失といった行為ではなく、製品の「欠陥」という性質と状態に焦点を当てていることです。

つまり、「製造物責任(PL)訴訟は、製品の欠陥が原因で発生するものだから、欠陥のない製品を作れば、製造物責任(PL)訴訟は回避できる」ことになります。しかしながら、実際には、そんな簡単な話ではありません。

ひとつの災害(事故)が 企業に大きなダメージを与え 社会が その企業の存続を許さない時代へ、PL訴訟で大きなダメージを受けないためには、どうすれば良いのか? 技術者の立場から、2つ行わなくてはならない取り組みを紹介します。「PL予防 (Product Liability Prevention)」と「PL防御 (Product Liability Defense)」です。

 

PL予防 (Product Liability Prevention)

「PL訴訟とは製品の安全性の欠陥が原因なので 欠陥のない製品を作ればPL訴訟は回避できる」という考え。欠陥のない製品を目指す「リスク・マネジメント」

  • 労働災害の未然防止活動
  • リスクアセスメントとリスクの低減の取組み

使用中に事故や労働災害が全く発生しない製品を作ることができれば、製造物責任(PL)訴訟は発生しません。現実的には、事故や労働災害が絶対に発生しないことは無理だったとしても、その発生頻度を少なくすることや、危害の大きさを小さくすることで、つまり、製品のリスクを低減することで、PL訴訟の発生を抑制することは可能です。

そのために、技術者が行わなければならないこと、それは、危険源を見つけ出し、リスク評価を行い、リスクが大きいところから優先して、危険源の除去や工学的な保護方策を行い、許容できるレベルまでリスクを低減する。それでも絶対に安全な製品を作ることは不可能なので、残ったリスクに対して使用者への情報提供(取扱説明書や警告ラベルなど)を行うことです。製品による事故や労働災害が発生しにくい製品を作ることをまず第一に考えなければなりません。

 

PL防御 (Product Liability Defense)

安全規格に満足していても必ずしもPL訴訟を回避できるわけではない。欠陥のない製品を作るために十分な努力と配慮していたという事実による反論(抗弁)で訴訟の賠償金を最小限に食い止める。PL防御とは、文書を残す「ドキュメンテーション・マネジメント」です。

  • 訴訟時の反論(抗弁)の事前準備
  • 製品に対して安全配慮を行ったことを示す証拠文書の作成と保管

どんなに安全に配慮した製品を作ったとしても、例えば、使用者にミスで事故が起こることがあります。また、製造業者が予想もできない製品の使われ方をする場合もあります。どんなに優れた使用者であっても絶対にミスをしないことはなく、どんなに優れた技術者であってもミスをしないことはありません。つまり、事故や労働災害がゼロになることは無いといを前提で対応しなければなりません。

技術者は、欠陥の無い製品を作るために十分な配慮と取り組みを行ってきたという事実(証拠)を残さなければならないのです。

 

PL予防とPL防御は一体で取り組む

(その7に続く)

 

 

MSDコンサルティング