機械安全の法律・規格と設計手法

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8. 製造物責任(PL)法(その8)|(消滅時効) 第五条|時効は長期化する傾向にあります

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私は、労働災害を防ぐためには技術者は、 製造物責任を知らなければならないと考えています。法の解釈や法理論を説明するのではなく、PL訴訟のに係わるような製品の事故や労働災害を未然に防ぐためにはどうすれば良いのかを製造物責任法の規定をベースに説明します。

 

今回は、消滅時効についてです。時効には2つの時効が存在します。

  • 被害が発生から損害賠償の請求ができる期間
  • 製品を引き渡してから製造物責任を負う期間

 

平成六年法律第八十五号
製造物責任法

(消滅時効)
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行使しないとき。
二 その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したとき。
2 人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
3 第一項第二号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

 

「被害が発生から損害賠償の請求ができる期間」

被害者(直接的被害者だけではなく、その遺族や近親者等)が、加害者の行為が違法であることとそれによって損害が発生したことを知ってから(一般産業機械では、事故や労働災害が発生してから)5年間、損害賠償の請求をしなかった場合、損害賠償の請求権がなくなります(物損に関しては3年間)。海外の場合は、それぞれの国でこの期間は異なります。

注、2020年4月から人の生命又は身体を害する製造物責任法による損害賠償請求権は、3年から5年に長期化しています。

 

「製品を引き渡してから製造物責任を負う期間」とは

製造業者が製品を使用者に引き渡してから10年経つと製造物責任法での損害賠償の請求権は時効により消滅します。つまり、製造物の「欠陥」に基づく損害賠償の請求権は無くなります。

一方、民法の不法行為(製造業者の故意や過失)は、事故や労働災害が20年以内に起これば不法行為責任を追求することができます。つまり、製造業者が製品を使用者に引き渡してから15年目に事故や労働災害が発生したときは、製造物責任(欠陥に基づく損害賠償請求)は問えないけれども、不法行為責任(製造業者の故意や過失に基づく損害賠償請求)は問えることになります。

 

 

MSDコンサルティング