機械安全の法律・規格と設計手法

安全な製品を設計・製造するために必要な法律・規格の情報を紹介しています。

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機械安全の原則|人はミスをする

機械の安全化を進める上で技術者が知っておかなければならない原則が3つあります

  • 人はミスをする
  • 機械は故障する
  • 絶対安全は存在しない

この3つの原則の中で、今回は、「人はミスをする」を考えてみましょう。

人はミスをする生き物である。これは、誰しもが納得することとでしょう。ミスをしない技術者や作業者はいません。私自身もミスをします。労働災害が発生した時の労働者のミス、言い換えれば、不安全行動を一般に、ヒューマン・エラーと呼びます。

操作ミス、判断ミスなどのヒューマン・エラーは、知識や能力があったとしても、人である限りやってしまうミスであり、ヒューマンエラーをゼロにすることはできません。

私が過去に行った調査を紹介します。産業機械の労働災害では、90%以上のものが何らかの作業者の不安全行動(人のミス)が原因のひとつになっていました。一方、もし仮に作業環境や機械の不安全状態(機械の欠陥)が無かったならば、その労働災害の90%以上は防ぐことができたものでした。

つまり。人がミスをしても労働災害に結びつかない機械を設計・製造することが、労働災害を減少させる最も効果的な安全方策なのです。だから、機械の安全化を進める上で技術者は、常に「人はミスをする」を前提として機械を設計・製造しなければならないのです。

技術者が前提としなければならない人のミスは、大きく分類すると2つあります。作業者の「過失によるミス」と「故意によるミス」です。「過失によるミス」を考慮するのはわかるが、なぜ、作業者の「故意によるミス」を考慮しなければならないのか? それは、作業者のモラルの話なので、そこまで技術者や設計者が配慮する必要はあるのか?と思われる方も多いと思います。しかし、本当に労働災害を防ごうと思うのならば「故意によるミス」を防がなければならないのです。なぜ、私がそのようなことを言うのかというと、私の知っている(または、対応した)労働災害の90%以上は、製造者が取扱説明書で指示した安全のルールを守っていないから発生したものだからです。

 

ミスには例えば次のようなものがあります。 

「過失によるミス」

  • 技術や知識不足によるミス、例えば、吊り荷の重心を知らずに荷が落下する。
  • 疲労や不注意によるミス、例えば、自動車のブレーキとアクセルの踏み間違い。
  • 心身機能低下によるミス、例えば、通路の段差でつまづく。

「故意によるミス」

  • 近道・省略行為のミス、例えば、機械を横切るのに通路や踏切橋を使用せず、機械の上を乗り越えて横切る。
  • 権限からの圧力によるミス、例えば、間違いや問題点を指摘できない、時間やノルマに追われて安全確認を怠ったり、危険行動と知りつつルールを無視する。

どのミスも、日常生活の中でありふれたミスです。

これらのミスをどのように防ぐのかも重要な事ですが、ミスをしても被害が最小限に抑えることができる製品の設計・製造が求められるのです。

 

 

MSDコンサルティング