CEマーキングの技術文書(Technical Document)を作成するときの8つの心得
CE マーキングでの適合宣言(自己宣言)は製造者が自ら行う宣言です。その自己宣言を行うためにはそれらの証拠となる技術文書(データや技術的な書類など)を準備する必要があり、その内容は第三者が理解し易い内容にしなければなりません。ただし、この技術文書(データや技術的な書類など)は、どのように書けばよいのかについてのマニュアルは存在しません。そこで今回は、CEマーキングの技術文書(Technical Document)を作成するときの心得として、重要な8つのポイントを挙げてみました。
- 1. 技術文書作成は、製造者の責任です
- 2. 技術文書の保管は、製造者の責任です
- 3. 第三者が理解できる記述しなければなりません
- 4. ユーザーに提供するものでははありません
- 5. 定期的な確認(メンテナンス)が必要です
- 6. リスクアセスメントの文書が必要です
- 7. 整合規格を用いて評価をおこないましょう
- 8. 証拠書類であることを忘れずに
1. 技術文書作成は、製造者の責任です
製造者は、欧州に輸出した製品が欧州の安全、健康、および環境の要件を満たしていることを確認する責任があります。製造者は、適合性評価の実施、技術資料の作成・保管、EU適合宣言の発行、および製品へのCEマークの貼り付けを行わなくてはなりません。
2. 技術文書の保管は、製造者の責任です
各指令が要求事項に製品が適合していることを証明する情報を記した、技術文書の作成を製造者は義務付けられています。技術文書は、指令が別の期間を明示する場合を除き、製品の最終製造日から最低10年間保管(提出可能な状態に)することは製造者の責任です。
3. 第三者が理解できる記述しなければなりません
技術文書は、EUの公用語(一般には英語)とする。特に1 冊のファイルにまとめる必要はないが、当局から要求された場合に、速やかに提出しなければいけません。当局からの要求とは、例えば労働災害の発生した時のことです。そのときに、技術文書は、「製造者の正当性の主張」の役割を担います。よって技術文書は第三者(当局の担当者や弁護士・裁判官)に分かるような記述方法を心掛けなければなりません。
4. ユーザーに提供するものでははありません
技術文書は最悪の事態が発生した時に、当該製品が安全に対する要求事項に適合していることを示すものです。つまり「技術文書は、要求されたときに当局にのみに提出するものであって、ユーザーに提供するものではない」 技術文書の作成ではこの基本的考え方を忘れないようにしてください。
5. 定期的な確認(メンテナンス)が必要です
整合規格が改訂された場合は、それを反映した要求事項に製品を適合しなければなりません。 また、製品に対する許容リスクも時代や環境によって変化していくため、リスク分析を含め、定期的に技術文書が現在の状況に即しているかの見直しが必要です。
6. リスクアセスメントの文書が必要です
リスクアセスメントに関する文書(危険源を同定(見つけ出す)、リスク低減の保護方策の記述、残存リスクの記述)は必ず技術文書の中に含まれていなければなりません。
7. 整合規格を用いて評価をおこないましょう
もし、整合規格以外で評価する場合は、その方法の詳細を記載しなければならない。独自の評価の場合も、基本は国際規格等を採用する必要があり、公が認める技術的な裏づけの無い評価方法は使用してはいけません。
8. 証拠書類であることを忘れずに
試験レポートには試験日、場所、試験員、使用測定器、校正記録などの項目はもとより、試験実施者の署名や、検証者の署名が必要です。
MSDコンサルティング
CEマーキングとは製品が安全・健康・環境に対しての必須要件を満たしていることを製造者が自らが示すマーキングです。
製品が該当する指令の必須要件 (Essential Requirements) を満たしていることを製造者が自らが示すマーキングです。指令は、EUにおける製品の安全性と性能の要求事項を提示しています。CEマーキングは、EU市場において製品を販売するために求められる規制要求事項です。
CEマーク
「CE」マークとは、EU地域(欧州連合地域)で流通する指定製品に義務付けられた、EU指令が定める健康および安全に関する必須要求事項を満たしていることを製造者が宣言することで製品に表示することができるマークです。
製品がEU域内を自由に流通することができるように、労働者や消費者に危害や損傷を与えないために、EU加盟国の安全基準に適合していること示すことを目的にしています。
「CE」の文字は、欧州の多くの製品に表示されますが、これは製品が安全性、健康、および環境の法的な要件を満たすことを製造者自身が宣言していることを示しています。
CE マークを貼り付けた製品は、適用されるEU法令条項に準拠し、適合性評価されたものとみなされます。CE マーキングを定めるEU法令の対象製品にCEマークを貼らずに流通させた場合は、関わった事業者に対して罰則があります。
また、対象外の製品や適合性評価されていない製品にCE マークを表示することも処罰の対象になります。
<ポイント>
- 「CE」の文字は、製品の品質保証や認証取得を示すものではない。あくまで、製造者がEU法令に従って安全性と環境への適合を宣言しているに過ぎません。
- 「CE」の文字は、製造者自身の責任で製品に付けるものである。だから「CE」マークがついていたとしても、公的な機関が認証しているとは限りません。
- 「CE」の文字は、原産地が欧州であることをではない。だから、日本や中国で製造された製品にもマークをつけることができます。
表示方法
欧州委員会のCEマークの解説(英語)
製品にCEのマークが必要な国(2020年7月時点)
ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン
<EFTA加盟国4カ国>
アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン
<EU加盟候補国1カ国>
トルコ
注:EUを離脱したイギリスはEU加盟国には含まれていませんが、2020年12月31日までの移行期間中にイギリス市場に製品を輸出する場合は、CEマークを使用できます。
EU(=European Union / 欧州連合)
EFTA(=European Free Trade Association / 欧州自由貿易連合)
MSDコンサルティング
機械指令2006/42 / ECに関するよくある質問
機械指令2006/42 / ECの条件を8つの簡単なポイントに要約してみました。
- 1.機械指令とは何ですか?
- 2.機械指令の適用分野
- 3.機械とはどういう意味ですか?
- 4.部分的に完成した機械とはどういう意味ですか?
- 5.指令の範囲から除外されているカテゴリーはありますか?
- 6.機械指令の内容
- 7.CE機械認証
- 8.機械のCE適合宣言
1.機械指令とは何ですか?
指令2006/42 / ECは、現在施行されている機械指令のバージョンです。最初のバージョンは1989年に起草され(指令89/392 / EEC)、その後1998年に改訂されました(指令98/37 / EC)。
機械指令の主な目的は、
- 高レベルの安全衛生保護に基づいて、機械に適用される安全衛生要件を調和させる
- 欧州市場での機械の自由な動きを保証するため。
2.機械指令の適用分野
指令の対象となる製品の一般的なカテゴリは次のとおりです。
- 機械類
- 交換可能な機器
- 安全コンポーネント
- 吊り上げ装置
- 吊り上げ用に設計および製造され、吊り上げ機械または吊り上げアクセサリの不可欠な部分として機能するチェーン、ロープ、およびストラップ
- 取り外し可能な機械式伝達装置
- 部分的に完成した機械
3.機械とはどういう意味ですか?
機械指令は、次の「機械」の定義を提供します。
第2条ポイント1: 「直接適用される人間または動物の努力以外の駆動システムが取り付けられている、または取り付けられることを意図した、リンクされた部品またはコンポーネントで構成され、少なくとも1つが移動し、特定のアプリケーション。
次に、指令は機械の概念をさらに拡張し、機械を次のように定義します。
- 最初のポイントで言及されたアセンブリで、オンサイトまたはエネルギーと運動のソースに接続するためのコンポーネントのみが欠落しています
- 第1および第2のポイントで言及されているアセンブリで、設置の準備ができており、輸送手段に取り付けられている場合、または建物や構造物に取り付けられている場合にのみ、そのままの状態で機能できます。
- 前の3つのポイントで言及された機械のアセンブリ、または部分的に完成した機械。これらは、同じ目的を達成するために、統合された全体として機能するように配置および制御されます。
- リンクされた部品またはコンポーネントのアセンブリ。少なくとも1つは移動し、結合されます。負荷を持ち上げることを目的としており、唯一の電源は人間の力で直接適用されます。
4.部分的に完成した機械とはどういう意味ですか?
指令の第2条には、部分的に完成した機械の次の定義も含まれています。
ほとんどである「組立機械それ自体の特定のアプリケーションを実行することができません。部分的に完成した機械は、他の機械または他の部分的に完成した機械または装置に組み込まれるか組み立てられることのみを目的としており、それによってこの指令が適用される機械を形成します。」
多くのメーカーが単一のデバイスの製造を専門としており、複数の最終用途があるため、市場に出回っている機器の多くは「機械」として分類できず、より具体的には「部分的に完成した機械」として分類できます。
5.指令の範囲から除外されているカテゴリーはありますか?
一部のタイプの機器はさまざまな規制の対象であるため、指令の条件から除外されています。それらが含まれます:
- 航海船および移動式オフショアユニット、ならびにそのような船および/またはユニットに搭載された機械
- 鉱山の巻線ギア
- これらの輸送手段に搭載された機械を除く、航空、水上、および鉄道網による輸送手段
- 低電圧指令(2014/35 / EU)の対象となる電気および電子製品
- すべての武器(銃器だけでなく)
- 指令2003/37 / ECでカバーされるリスクのための農林業用トラクター。
6.機械指令の内容
この指令は、製品がヨーロッパ市場に投入される前に、設計、製造、および運用のすべての段階で満たさなければならない基本的な健康と安全の要件を定めています。
この指令は、機械を2つの大きなグループに分けています。
- 認定されたサードパーティによる認定が必要なマシン
- メーカーが自己認証できる機械。
指令の付属書IVに含まれる機械は、設定された安全衛生要件への準拠を確認するために、特定の機関(通知された認証機関)による評価プロセスを経る必要があります。
他のすべてのタイプの機械については、製造業者は、指令自体の付属書VIIに記載されている指示に従って、関連する技術ファイルを作成して保持するだけで済みます。
製品は、指令が発効した後に適切なを運ばなければならない大きな変化に市場や被写体に置かマーキングとを添付しなければならない適合宣言(または設立の宣言、一部完成機械類の場合) 。
7.CE機械認証
すべての機械には、CE認証に関連して、次の最小限の詳細を視覚的、判読可能、および消えないようにマークする必要があります。
- 製造元の商号と完全な住所、および該当する場合はその正式な代表者
- 機械の指定
- 「CE」マーキング(ロゴ)
- シリーズまたはタイプの指定
- シリアル番号(ある場合)
- 建設年、つまり製造工程が完了した年
CEマークを貼付する際に、機械の日付を前付けまたは後付けすることは禁止されています。
部分的に完成した機械に関して重要な点を指摘する必要があります。これらの製品は、より複雑な機器に組み込むことを目的としているため、CEマークまたはロゴを付けてはなりません。これらの製品には、後で適切なCEマークが付けられます。ステージ。
8.機械のCE適合宣言
市場に出され、機械指令の対象となるすべての製品には、その耐用年数全体にわたって、製造業者によって発行された機械のCE適合宣言を添付する必要があります。
指令の附属書IIは、両方のために、本文書に含まれていなければならない最低限の内容について概説機械とのために、部分的に完了した機械を。
繰り返しになりますが、指令は2つのタイプの製品を区別していることを指摘することが重要です。以下の場合のために、部分的に完成機械、宣言は、製品を識別するの主機能を果たすだけでなく、本質的な安全要求(ERS)は、リスク分析の対象となっているという証拠を有する部品を組み込んだコンストラクタを提供するだけでなく。次に、建設業者は、不完全な機械の供給者として、製品の製造業者が満たすことができなかったすべてのERSを評価する必要があります。
最後に、2種類のドキュメントを明確に区別するために、指令は次の方法でそれらを識別します。
- 機械の適合宣言(付録II-A)
- 部分的に完成した機械の設立宣言(付録II-B)。
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機械製品に対する製造者の法的責任|機械指令(2006/42/EC)
欧州加盟国に製品を輸出する時の安全衛生規則の遵守や適合性評価の実施に関しての製造者の責任について紹介します。これらは、時間をかけて欧州委員会の公式サイトを見れば確認できることですが内容をまとめたもの見当たらないので、英国の政府の公式サイトを参考に、日本の製造者に関わる部分に特化して記載しました。CEマーキングの理解に役立てていただければ幸いです。
目次
機械指令(2006/42/EC)の適用製品
機械製品の製造者は、次の機械製品に対して機械指令2006/42/ECをに準拠しなければいけません。製造者は、欧州市場に輸出した製品が欧州の安全、健康、および環境の要件を満たしていることを確認する責任があります。適合性評価の実施、技術資料の作成・保管、EU適合宣言の発行、および製品へのCEマークの貼付は、製造者の責任です。
- 機械類(machinery)
- 交換可能装置(interchangeable equipment)
- 安全用構成部品(safety components)
- 持ち上げ機用附属品(lifting accessories)
- チェーン、ロープ、帯ひも(chains, ropes and webbing)
- 取外し可能な機械式伝達装置(removable mechanical transmission devices)取り外し可能な機械式伝動装置
- 半完成機械(partly completed machinery)
例えば、産業用工作機械、大型印刷機、食品機械、射出形成機などが含まれます。詳細な規制対象製品や対象外製品は製品は、機械指令2006/42/ECの規定で確認してください。
機械製造者の法的な責任
製造者は、製品が機械指令2006/42/ECに規定された全ての必須安全要件(EHSRs)を確実に満たすようにしなければなりません。そのためには、製造者は次の6つの手順を実施しなければなりません。
- 該当する指令と整合規格を特定する。
- 製品固有の要件を確認する。
- 認証機関(Notified Body:NB)よる適合性評価が必要か否かを特定する
- 製品を検証して適合性を確認する
- テクニカルファイル(技術文書)を作成し、保管する。
- EU適合宣言書に署名し、CEマークを製品に貼る
この中でも、テクニカルファイル(技術文書)は、最終的にEU整合法令の適合性を証明する重要文書になります。またこのテクニカルファイルには必ず、リスクアセスメントの結果、適用を受ける指令の必須要求事項をどのように満たしたのかの資料が含まれなければなりません。
注:ある種の危険性が高い製品は、厳格な確認が必要になるため、認証機関(Notified Body:NB)による評価が必要になります。詳細は機械指令2006/42/ECの規定で確認してください。
適合性評価
機械指令に準拠していることを証明する責任は製造者にあります。機械製品は、機械指令の必須安全要件(EHSRs)の要求項目を確実に満たさなければなりません。
指令に基づく適合性評価には3つの方法があります。これは、機械指令の付属書Ⅳに含まれているかどうかによって変わってきます。
- 内部チェック(自己認証宣言):付属書Ⅳに含まれていない、または完全に整合規格に従って製造された機械の場合、必須安全要件(EHSRs)に対して製造者自身がリスクアセスメントを行い、テクニカルファイルとEU適合宣言書を作成し、製品にCEマークを貼ります。←このブログの話題の中心はこの方式です。
- EC型式検査:付属書Ⅳに含まれていて、整合規格に準拠していない部分がある機械製品については、認証機関(Notified Body:NB)による評価を受ける必要があります。機械の適合性が確認された場合には、認証機関(Notified Body:NB)はEC型式検査の証明書を発行します。
- 完全な品質保証:完全な品質管理システムを利用して製品を製造する場合、認証機関(Notified Body:NB)による完全品質管理システムの評価を受ける必要があります。
注:機械が規制の対象となる他の機械への組込みを目的としている場合は、組み込み宣言書を作成する場合もあります。
認証機関(Notified Body:NB)
認証機関(Notified Body:NB)とは、EUの各加盟国の国家認定機関によって第三者認証手続きを実施するために必要な技術的能力を保持し、業務の客観性、透明性があり、かつ業務に責任を有すると認められた機関です。その団体リストは、欧州委員会のデータベースNANDOで確認することができます。
CEマーキング
CEマーキングは、機械がすべての関連規制のすべての規定を満たしていることを示すものです。CEマークが付いている機械は、要件を満たしていると見なされ、実際にそれらの要件を満たしていれば、欧州域内で自由に流通することができます。
CEマーキングは、明確で、視認性が高く、読みやすく、消えない方法で貼付する必要があります。詳細については、欧州委員会の公式サイトを参照願います。
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