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CEマーキングの違反と罰則|最も怖いのは事故や労働災害が発生した時|欧州に輸出した場合のCEマーキングの違反と罰則について説明します。

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欧州に輸出した場合のCEマーキングの違反と罰則について説明します。

まず初めに、CEマーキングではありませんが、有名な欧州での違反事例を紹介します。

「PS one」から有害物質を検出、欧州向け製品が差し止められ、販売不能に——。電機メーカーの環境担当者の間で語り草となっている事件がある。2001年10月、欧州市場向けにオランダの港で陸揚げされたソニーの家庭用ゲーム機のPS oneから、同国の法律で定められた基準を上回るカドミウムが検出された。PS oneは輸入差し止めと部品の交換を余儀なくされた。出荷は約2カ月滞り、ソニーは130億円の売り上げを失った。

PCメーカーに環境対応を迫る「RoHS」 | 日経クロステック(xTECH) 2006.03.13

CEマーキングの罰則は各国で異なりますが、その悪質さを考慮した厳しい罰則が各国の法規に基づき課せられることになります。出荷・流通の停止、市場からの回収、不正メーカの公開、稼働停止の他、拘置処置または罰金の指示が出されることもあるとのことです。また、企業にとっては、それとは別に製造物責任や社会的責任を問われることもあります。

摘発事例は欧州委員会の「Rapid Alert System」サイトで公開されています。消費者に対しての注意喚起の情報公開であるため産業機械に関する情報は、ほとんどありませんが、実際にはCEマーキングの違反を指摘されるケースはあります。

ここでは、産業機械で違反が発覚するタイミングとその時の違反内容、そして対処方法について話していきます。

違反が発覚するタイミング

違反が見つかるタイミングは、一般消費者向けの製品ならば販売店の店頭監視もありますが、産業機械の場合は次のタイミングです。

  • 欧州通関(上市)時
  • 工場据付時や使用時の安全査察の時
  • 事故や労働災害が発生した時

最も怖いのは、事故や労働災害が発生した時に、CEマーキングの違反が見つかった時ですが、順を追って説明します。

欧州通関(上市)時

この場合は、CEマーキングの書類等の不備があるため欧州の輸入業者が機械を受け取ることができないということが大半を占めます。例えば、製品にEU適合宣言書が添付されていない、貨物の名称や型番がEU適合宣言書に記載のそれと異なっている等です。この場合の対応は、輸入業者に適切なEU適合宣言書のPDFをメールで急いで送って対応することです。対応のポイントは「急いで送る」です。
このような指摘がある場合の多くは、CEマーキング以外の部分で通関上に何か不備があったとか、不審な貨物ではないかと疑われている場合です。対応が遅ければ取締り当局の疑いが増してきます。不備の指摘に対して即対応で疑いを晴らしましょう。

工場据付時や使用時の安全査察時 

最も違反の発覚が多いのがこの場合です。製品の安全性の査察時に指摘される違反はEU適合宣言書の不備から始まり、製品に貼り付けているCEマークや製造銘鈑等の情報の不備、そして製品自体が該当する指令の必須要求事項(EHSRs)を満たしているかの確認が行われます。この場合の対応は、安全監査官の指摘に対して指令の必須要求事項に基づき、技術文書や整合規格(EN規格)を根拠に正しく反論すると共に、製品の安全仕様に落ち度があった場合は「ご指摘ありがとうございました」と謙虚に受け止め製品に対して安全改善策を実施することです。
重要なポイントは、技術文書や整合規格(EN規格)を根拠に正しく反論できることです。そのためには、CEマーキングの適合性確認を外部に頼らず技術者自身で行うことだと私は思っています。

事故や労働災害が発生した時

最も大変になるのが事故や労働災害が発生した時にCEマーキング違反が発覚した場合です。事故や労働災害が発生した原因として「製品に欠陥は無かったのか?これに対して当局(警察・労安局・保険組合等)の調査が行われます。まず初めにEU適合宣言書と技術資料(テクニカルファイル)の提出要求から始まり、労安局からの質問に対しての回答作業が終わりなく続いていきます。ここで重要なポイントは、10年間の保管を義務付けられているEU適合宣言書と技術資料(テクニカルファイル)を弁護士に相談した後に当局の要求期限までに提出できることです(提出期限は1週間程度と言われています)これにより欧州の規則(CEマーキング)に対して正しく対応してきたという企業の安全に対する取組み姿勢を示すことができます。一方、もし、EU適合宣言書と技術資料(テクニカルファイル)を期限までに当局に提出できない場合は、欧州の規則を守らない非常に疑わしい企業であるという前提のもと、当局の調査が行われていくことになります。最悪の事態です。

技術資料(テクニカルファイル)を当局に提出しなければならない状況になった場合は、必ず弁護士の助言を受けるようにしてください。これ以降の作業は、製造物責任に関して弁護士の協力を受けながら作業を進めることをお勧めします。 

 

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