機械安全の法律・規格と設計手法

安全な製品を設計・製造するために必要な法律・規格の情報を紹介しています。

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欧州の機械安全規格は、A規格、B規格、C規格 (タイプA規格、タイプB規格、タイプC規格)の3段階の階層構造の各階層の分類されますが、C規格は、A規格やB規格よりも優先されます。

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欧州の機械安全規格は、A規格、B規格、C規格 (タイプA規格、タイプB規格、タイプC規格)の3段階の階層構造の各階層の分類されますが、C規格は、A規格やB規格よりも優先されます。このタイプC 規格の要求事項が、タイプA規格 またはタイプB規格で規定されているものと異なるときは、このタイプCの要求事項に従って設計および製造された機械への他の規格の要求事項よりも、このタイプ C 標準の要求事項が優先されます。

 

A規格(タイプA規格)

  • 基本安全基準:機械に適用できる基本的な概念、設計の原則、および一般的な側面を与える標準

B規格(タイプB規格)

  • 一般的な安全基準:幅広い機械で使用できる1つの安全面または1つのタイプの安全装置を扱う標準

B1規格(タイプB1規格)

  • 特定の安全面(安全距離、表面温度、ノイズなど)に関するタイプB規格

B2規格(タイプB2規格)

  • セーフガードに関するタイプB規格(たとえば、両手制御装置、連動装置、感圧装置、ガード)

C規格(タイプC規格)

  • 機械安全基準:特定の機械または機械のグループの詳細な安全要件を扱う標準

 

欧州EN規格のCEN GUIDE 414”Safety of machinery – Rules for the drafting and presentation of safety standards”の6.3.2では次のように規定されています。

When requirements of this type-C standard are different from those which are stated in type-A or type-B standards, the requirements of this type-C standard take precedence over the requirements of the other standards for machines that have been designed and built according to the requirements of this type-C standard.

このタイプC 規格の要求事項が、タイプA規格 またはタイプB規格で規定されているものと異なるときは、このタイプCの要求事項に従って設計および製造された機械への他の規格の要求事項よりも、このタイプ C 標準の要求事項が優先されます。

 

つまり、タイプ C 規格が制定されている製品。例えば、工作機械、繊維機械、産業用ロボット、印刷機、無人搬送機などの製品の場合は、まず初めに、タイプC規格に準拠していることを確認しなければならないということです。

タイプCの規格が存在しない製品の場合は、タイプA規格であるリスクアセスメントを実施し、危険源を選定しリスクレベルを求めた後、リスクの高いものから順にタイプB規格の規定に従って保護方策を行っていきます。

一方、タイプCの規格の規格が存在する場合は、タイプA規格であるリスクアセスメントを実施し、危険源を選定しリスクレベルを求めるまでは同じですが、まず初めに、タイプCの規定に従って安全方策を実施します。そして、タイプCに規定の無い部分についてタイプBの規定に従って安全方策を行うことになります。

 

ここからは、筆者の私見です。

タイプCの規格は、特定の機械に対しての特別な規格のため、規格の制定や改定時にはその規定内容に関して各国の製造メーカの思惑がぶつかることになります。自社にとって有利であり、他社に対して不利になる規定を盛り込みたい思いが各メーカにあるため、ある機器(部分)では製造者に厳しい規定、ある機器(部分)では製造者に甘い規定になるなど、一貫性に欠ける部分があると感じる時があります。

一方、タイプB2の規格には、安全機器メーカが積極的に規格の制定や改定に協力を行います。そして改定の度に、規格が厳しくなっています。自社の安全機器を規格化することで売り上げを伸ばすことを考えてのことだと思われます。

規格を知らない者は負けます。規格を知っていても勝てません。勝つのは規格を作る者のみです。欧州人の規格に対する考え方の基本はこの考え方です。

 

 

MSDコンサルティング