機械安全の法律・規格と設計手法

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取扱説明書への要求事項|機械指令の基本的な健康と安全の要件(EHSR)

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機械が市場に出される前やサービスが開始される前に製造者が実施しなければならない義務の1つに取扱説明書の提供があります。取扱説明書は、機械が市場に出される前や使用される前に作成されなければならず、それが使用者に届くまで機械に付随しなければならなりません。したがって、機械の輸入者や販売者は、取扱説明書が使用者に確実に渡されるようにする必要があります。また、「基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) 」は、紙の形式で提供する必要があることが一般的な常識になっています。 

 

ポイントは、

  • 取扱説明書の必須項目は決まっている。
  • 取扱説明書は、納入国の公用語でなければならない

 

 機械指令の基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) の必須要求事項の中から「取扱説明書」について解説します。

1.7.4.2取扱説明書の内容(Contents of the instructions)
各取扱説明書は、該当する場合は少なくとも次に示す情報を含まなければならない:

(a)製造者、またはその正当な代理人の氏名及び住所;
(b)製品番号を除いて、機械類自体に表示された機械類の名称(項目1.7.3 参照);
(c)EC適合宣言、または機械類の特性を示すEC適合宣言の内容を規定した文書、これには製品番号及び署名を強制規定としていない;
(d)機械類の一般的な説明;
(e)機械類の使用・保守・修理作業および正常な機能を点検するために必要とされる図面、図表、説明及び解説;
(f)操作者が占める作業場所の説明;
(g)機械類の意図する使用の説明;
(h)機械類があってはならない使用法で使用されないようにするための警告;
(i)図面・図表および取付手段を含む組立・据付および結合の取扱説明及びその機械類が据付けられる車台(chassis)又は設備の指定;
(j)騒音または振動を低減するための据付や組立についての取扱説明;
(k)機械類のサービス及び使用に関する説明、必要な場合は、操作者の訓練に関する説明;
(l)本質的安全設計、安全防護および付加保護方策を講じたのにもかかわらず依然として潜在する残留リスクについての情報;
(m)適切である場合には、備えるべき個人用保護具を含み、使用者によって講じるべき防護方策についての説明;
(n)機械類に付属される工具に関する基本的特性;
(o)機械類が使用・輸送・組立・サービス終了後や点検または予見可能な破損時の分解作業における安定性の要求事項を満たす条件;
(p)輸送・取扱・保管作業が安全にできることを確保する観点からの説明、機械類の質量および通常分離して輸送される種々の部品の質量の情報;
(q)事故または破損の場合に継続されるべき運転方法;阻害が起きそうな場合に設備が安全に阻害を排除できるようにするための運転方法の情報;
(r)使用者によって実施されるべき調整・保守作業の説明および監視されるべき予防保全対策;
(s)調整・保守が安全に実施されるように設計された取扱説明、これらの作業中講じられるべき防護対策を含むもの;
(t)操作者の健康や安全に影響を与える場合、使用される代替部品の仕様;
(u)大気中への騒音放出に関する次の情報:
-作業場所でのA特性音圧レベル(A-weighted emission sound pressure level)が70dB(A)を超える場合はその値、70dB(A)を超えない場合は、その事実を表示しなければならない、
-作業場所でのピークC特性瞬時音圧(peak C-weighted instantaneous sound pressure value)が63Pa(20µPaに対して130dB)を超える場合はその値、
-作業場所でのA特性音圧レベルが80dBを超える場合は、機械類から放出されるA特性音源パワーレベル(A-weighted sound power level)。
これらの値は、問題の機械類について実際に測定されたものであるか、生産される機械類を代表する技術的に同等な機械について採られた測定値として確定されたものであるかのどちらかでなければならない。

非常に大型の機械類の場合、A特性音源パワーレベルの代わりに機械類周囲の指定位置におけるA特性音圧レベルを示すことができる。整合規格が適用できない場合、騒音レベル(sound levels)は当該機械類について最も適切な方法で測定しなければならない。当該機械に放出騒音量(sound emission value)が表示される場合は何時も、これらの値の周囲の不確定さを明示しなければならない。すなわち、測定時における機械類の運転条件及び使用された測定方法を記述しなければならない。作業場所が規定されていない場合または規定できない場合、A特性音圧レベルは、機械類表面から1mの距離で、床面又は作業台から1.6mの高さで測定しなければならない。このとき、最大音圧を示す位置とその値を明示しなければならない。個別のEU共同体指令が、音圧レベル(sound pressure levels)又は音源パワーレベル(sound power levels)の測定に関して別に要求事項を規定している場合は、それらの指令が適用されなければならない、また、このセクションの対応する条項は適用する必要はないものとする。

(v)機械類が人に危害を及ぼす非イオン化放射を放出するような場合、特に埋め込み医療器具を有する人の場合には、操作者又は露座者に対して放出される放射についての情報。

 

取扱説明書は、形式を指定していません。 しかしながら、使用者が電子媒体で提供された、またはインターネットで利用可能になった取扱説明書を読む手段に必ずしもアクセスできるとは想定できないため、「基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) 」は、紙の形式で提供する必要があることが一般的な常識になっています。 ただし、指示が電子形式、インターネット、および紙の形式で利用できるようにすると、使用者は必要に応じて電子ファイルをダウンロードし、取扱説明書の紙のコピーの復元ができるため有益な方法になります。また、 この方法により、必要に応じて指示の取扱説明書の更新も容易になります。

取扱説明書の「基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) 」つまり安全に関わる部分は、原則として、EUの公式言語で提供しなければなりません。これは、市場に出されたり、使用されたりする加盟国の公用語です。
機械には、「原文の取扱説明書」、つまり、製造元またはその委任代理人によって検証された取扱説明書を添付する必要があります。日本の企業の場合は、通常英語になります。それに加え、機械が設置されている加盟国の言語で「原文の取扱説明書」が利用できない場合には、機械に、「原文の取扱説明書」と「原文の取扱説明書の翻訳」の翻訳を添付する必要があります。後者の要件の目的は、翻訳の正確さについて使用者が疑わしいと思ったときに「原文の取扱説明書」を確認できるようにするためです。
一方、製造者が指定する専門家のみを対象とした取扱説明書は、必ずしも使用国の言語で提供する必要はなく、その専門家が理解できる言語で提供することができます。しかし。注意すべき点は、この例外は、使用者や使用者が委託する保守担当者によって実施される保守操作の取扱説明書には適用されません。したがって、取扱説明書には、製造者または製造者が指定する専門家のみが実行する保守操作を明確に指定しなければなりません。

 

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