機械安全の法律・規格と設計手法

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英国UKCAのコンパイラの住所は英国域内でなければならないのか?

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ご質問の中に、「UKCAマーキングのコンパイラの住所は英国域内でなければならないのか? これは法的な要求事項でしょうか?」という質問がありましたのでこれについて私の考えを示してみます。

 

結論を言えば、現時点では「コンパイラの住所は英国域内でなければならないことを
明確に示した発表は英国政府からまだ無い」になります。

機械類のUKCA対応については次の英国機械安全規則とそのUKCAガイダンスが拠り所になります。

Brexit前に発行された機械安全規則”Supply of Machinery (Safety) Regulations 2008”
https://www.legislation.gov.uk/uksi/2008/1597/pdfs/uksi_20081597_en.pdf

Brexit後に発行されたUKCAガイダンス"Supply of Machinery (Safety) Regulations 2008: Guidance (GB)"
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/949786/Guide-to-machinery-safety-regulations-2008-tp.pdf

現時点では、UKCAガイダンスを使って機械安全規則”Supply of Machinery (Safety) Regulations 2008”を読み替えてUKCAに対応するしかないのですが、残念ながらコンパイラ(the person authorised to compile the technical file)についての記載はガイダンスにはありません。

機械安全規則”Supply of Machinery (Safety) Regulations 2008”の54ページ目の適合宣言書の規定の中でコンパイラ(person authorised to compile the technical file)についての記述があります。

PART 2 Regulations Annex II: Declarations
1. CONTENT
A. EC DECLARATION OF CONFORMITY OF THE MACHINERY
The EC declaration of conformity must contain the following particulars:
2. name and address of the person authorised to compile the technical file, who must be established in an EEA state;

上記の英国のCEマーキングの規定の"established in an EEA state" (欧州加盟国内に設立)をUKCAの場合にどのように読み替えれば良いのか? ここがポイントになります。

委任代理人(authorised representative)はEEAからUKに変更、認証機関はEEAのノーティファイドボディからUKのアプルーブドボディに変更しなければならないことはガイダンスに記載されています。このことから、コンパイラもEEA(欧州加盟国)からUK(英国)に変更と解釈するのが自然だと考えます。


但し、UKCAの英国規則が発行されるまでは、残念ながら「英国UKCAのコンパイラの住所は英国域内でなければならないのか?」について、はっきりしたことは言えないのが実情です。


参考にコンパイラに対しての個人的な考えを次のブログで紹介しています。
個人的な考えでは、コンパイラ(編纂者)とは、実質的に、英国の当局がテクニカルファイルの提出を要求する時の窓口になる者と認識しています。
たとえば、産業機械の場合には、販売後のアフターサービスを行う英国の法人に編纂者になってもらうのも、ひとつの方法だと考えます。
編纂者(窓口)には、UKCA適合宣言書を預けるにしても、テクニカルファイルを預ける必要はなく、日本の製造者でテクニカルファイルを保管し、当局から要請があれば、すぐにテクニカルファイルの電子データを編纂者(窓口)経由で当局に提出する「仕組みが確立さえしていれば」問題ないと考えています。

また、当局が製造者にテクニカルファイルの提出を要求するのは、重篤な労働災害などが発生した時と考えられます。その時は、その連絡はコンパイラ(編纂者)から受けるが、テクニカルファイルの提出は英国の弁護士経由で行うのが望ましいと考えます。

 

 

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