機械安全の法律・規格と設計手法

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なぜ、合理的に予見可能な誤使用を考慮しなければならないのか?|リスクアセスメント

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合理的に予見可能な誤使用( reasonably foreseeable misuse)とは、EN ISO 12100: 2010(JIS B 9700: 2013)の定義では「設計者が意図していない使用方法であるが、容易に予測できる人間の挙動から生じる機械の使用」です。リスクアセスメントを行う時には、必ず「合理的に予見可能な誤使用」を考慮しなければならないとされています。

 

なぜ、合理的に予見可能な誤使用を考慮するのか?

なぜ、リスクアセスメントで、合理的に予見可能な誤使用を考慮しなければならないのか? その理由は、事故や労働災害の9割以上が、この合理的に予見可能な誤使用が原因になっているからです。合理的に予見可能な誤使用を考慮して、間違った使い方をしても怪我をしないことを考えなければ、真に機械の安全性を高めることができないからです。

 

合理的に予見可能な誤使用の考慮が必要なとき

リスクアセスメントでは、次の3つステージで合理的に予見可能な誤使用を考慮することを求めています。

  1. リスクアセスメントの開始時に、機械の性能、特徴,関連する人,環境を特定するとき
  2. リスク低減のための安全防護及び付加保護方策を講じるとき
  3. 使用上の情報(取扱説明書・警告ラベル)の指示及び記述の内容を決定するとき

考慮すべき人が行う5つの間違った行動

合理的に予見可能な誤使用は、厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について(基安安発第0731004号) 3(4) に5つの行動が示されています。

  • 故障が生じた時の人の反射的な行動 
  • 集中力の欠如または不注意行動 
  • 作業中における省略行動 
  • 機械を稼動させ続けようとする正しくない行動 
  • 正しい手順を知らない労働者がとる行動
故障が生じた時の人の反射的な行動

機械の使用中に、機能不良、事故又は故障が生じた時に、注意が一点に集中することで周りが見えなくなり、本来は留意すべき他の事柄を忘れてしまい、本能的に行動してしまうことです。例えば、クレーンでの吊り荷が揺れて壁にぶつかりそうな様子を見て、思わず揺れを止めようと手を出してしまい、吊り荷と壁の間に指を挟まれて骨折してしまうことが挙げられます。

 

集中力の欠如または不注意行動 

人が機械を使う時に、疲労の慢性化や単調作業による意識低下により注意や判断がうまく働かず、間違いを生じる行動です。疲労は単純な肉体労働だけではなく、行動の基本をつかさどる脳の働きの低下もあります。例えば、自動車の運転でアクセルとブレーキを踏み間違えてしまう。医療現場での酸素ボンベと二酸化炭素ボンベの取り違えてしまうなどが挙げられます。

  

作業中における省略行動 

人が機械を使う時に、本来は実施しなけれければいけない正規の手順を省き、危険な行為を行う「近道・省略行動」と呼ばれる行為です。30m先に行けば横断歩道があるのに、車道を横断してしまう。メンテナンスで取り外した保護カバー(ガード)を取り付けずに運転を開始してしまうなどが挙げられます。

 

機械を稼動させ続けようとする正しくない行動 

機械にトラブルなどが発生したのにも関わらず、生産を優先して意図的に使用を継続しようとする行動です。例えば、生産性を落とすまいと機械を運転している状態で給油などのメンテナンス作業を行ってしまう。車体から異音や異臭がしたのにそのまま新幹線の運行を続けることなどが挙げられます。

 

正しい手順を知らない労働者がとる行動

機械の使用する者が意図する使用目的、用途、使用方法を正しく知らない労働者がとりがちな行動です。機械についての正しい知識を持たない状態で機械を取扱い、危険な行為を行うことです。

 

 

MSDコンサルティング