機械安全の法律・規格と設計手法

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意図する使い方と合理的に予見可能な誤使用について|機械指令の基本的な健康と安全の要件(EHSR)

今日は、Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) の必須要求事項の中から1.1.1の定義について解説します。

1.1.1 定義(Definitions)
本附属書の目的で使用する用語
(f)「ガード(guard)」とは、物理的バリヤのような特に保護を措置するための使用する機械の一部をいう
(g)「保護装置(protective device)」とは、単独でまたはガードと組合わせて用いるリスクを低減する装置(ガード以外のもの)をいう
(h)「意図する使い方(intended use)」とは、取扱説明書で記述された情報に従った機械類の使用をいう
(i)「合理的に予見可能な誤使用(reasonably foreseeable misuse)」とは、容易に予測できる人間の挙動からの結果として起こり得る取扱説明書に記述されていない機械の使用をいう;

「意図する使い方(intended use)」について

製造者は、機械を安全に使用してもらうために機械の制限を明確に示さなければいけません。リスクアセスメントの最初のステップは、機械の意図する使い方を含む機械の制限を決めることです。どんな機械であっても全ての用途に対して安全であるとは言い切れません。たとえば、木材を安全に加工することを機械の製造者は、ふつう金属を加工するための機械仕様は意図していません。たとえばパワーショベルの製造者は、それをクレーンの目的で安全に使用できるように設計していません。つまり、製造者のリスク評価は、特定の用途(意図する使い方)に基づいています。
仕様とは、たとえば、リフトの最大負荷、安定性を失うことなくクレーンを使用できる最大勾配、屋外で安全に使用できる最大風速。工作機械の最大寸法と工作機械で安全に加工できる材料の種類などを言います。

「合理的に予見可能な誤使用(reasonably foreseeable misuse)」

リスクアセスメントの最初の段階で、製造者は、合理的に予見できる機械の誤使用を考慮しなければなりません。機械の製造者は、機械のあらゆる誤使用を考慮することはできないかもしれません。しかし、意図的でないにせよ、特定の種類の誤使用は、同様の機械の誤仕様の知識、労働災害の調査、人の行動に関する知識などで予見可能なものです。
リスクアセスメントのタイプA規格の EN ISO 12100:2010では、考慮しなければならない誤使用または容易に予測可能な人間の行動を次の例で示しています

  • 機械が制御不能に陥る
  • 事故や障害が発生した時の人の反射行動
  • 集中力の欠如や不注意から生じる行動
  • 楽な作業のために行いがちな行動
  • 機械を稼働させ続けなければならないというプレッシャから生じる行動
  • 子供特有の行動

一人で使用するために設計された両手操作ボタンのプレス機を二人で操作してしまう、崩れそうになったパイルに思わず手を出してしますなどが合理的に予見可能な誤使用です。また、ガードや保護装置の取り外しや無効化には、特に注意を払う必要があります。このような、合理的に予見可能な誤使用を考慮してリスクアセスメントを行うことで、労働災害の発生を未然に防ぐことができるのです。

 

 

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