合理的に予見可能な誤使用｜リスクアセスメント

仮に製品自体になんら欠陥がないとしたとしても、使用者が、設計者が意図した製品の使い方とは違う間違ってしまうということがあります。具体的には、ヒューマンエラー、誤使用、不注意などが間違った使い方になります。労働災害の９割は、何らかの形でヒューマンエラー、誤使用、不注意が原因のひとつになっています。つまり、使用者が間違ってしまうということも、リスクとして捉えないと未然防止にはならないということです。

リスクアセスメントでは合理的に予見できる機械の誤使用を考慮しなければならない、

合理的に予見可能な誤使用 (reasonably foreseeable misuse)とは「容易に予測できる人間の行動によって引き起こされる使用であるが、設計者が意図していない製品の使用方法」と定義され、リスクアセスメントの最初の段階で、製造者は、この合理的に予見できる機械の誤使用を考慮しなければならないとされています。

容易に予見可能な人間の行動

ISO/IEC Guide 51では、設計者等が想定した使用法（intended use）のみならず、「合理的に予見可能な誤使用」（reasonably foreseeable misuse）も含んだ範囲でリスクを評価し、受け入れ可能なレベルに達するまで、リスク低減を行う反復プロセス示しています。また、JIS B 9700:2013 (EN ISO 12100:2010)規格では、合理的に予見できる機械の誤使用を、リスクアセスメントを行う時に考慮しなければならないものとして規定し、容易に予見可能な人間の行動（誤使用）として次の状態や人の行動の例を示しています。

• 機械が制御不能に陥った状態
• 事故や障害が発生した時の人の反射行動
• 集中力の欠如や不注意から生じる行動
• 楽な作業のために行いがちな行動
• 機械を稼働させ続けなければならないというプレッシャから生じる行動
• 子供特有の行動

具体的な事例

• ２個のボタンを右手と左手で押して作動するプレス機の押しボタンを、左手の指と肘を使って操作する。
• コンベアの上で崩れそうになった製品を見て思わず柵を乗り越えて機械の内部に侵入してしまう。
• メンテナンスで取り外したガードを取り付けずに運転を開始する。
• 扉のインターロックの保護装置を無効化して扉を開けても機械が停止しないように改造する。

これらが、 合理的に予見可能な誤使用です。 

まとめ

私の経験からすると、労働災害の9割が何らかの「合理的に予見可能な誤使用」により発生しています。言い換えれば労働災害の多くは「合理的に予見可能な誤使用」を考慮してリスクアセスメントと安全方策を実施していれば防ぐことができたのです。

労働災害とは、人の「合理的に予見可能な誤使用」を考慮していない、機械の「安全方策の欠陥」により発生すると認識して、機械の設計・製造を行わなければなりません。

MSDコンサルティング