機械安全の法律・規格と設計手法

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取扱説明書(その1)|機械指令

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機械指令の基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) の必須要求事項の中から「取扱説明書」について解説します。ポイントは、

  • 取扱説明書(安全の要件)は、紙で提供する
  • 取扱説明書は、納入国の公用語でなければならない

機械が市場に出される前やサービスが開始される前に製造者が実施しなければならない義務の1つに取扱説明書の提供があります。取扱説明書は、機械が市場に出される前や使用される前に作成されなければならず、それが使用者に届くまで機械に付随しなければならなりません。したがって、機械の輸入者や販売者は、取扱説明書が使用者に確実に渡されるようにする必要があります。また、取扱説明書は、紙の形式で提供する必要があることが一般的な常識とされています。

 

1.7.4 取扱説明書(Instructions)

すべての機械類は、公式なEU共同体言語で表現した、または当該機械が市場に出されるおよび/または使用される加盟国の言語で表現した取扱説明書を添付しなければならない。その機械類に添付される取扱説明書は、「原文の取扱説明書」であるか、または「原文の取扱説明書の翻訳」でなければならない。翻訳の場合には、原文の取扱説明書を添付しなければならない。例外として、製造者またはその正当な代理人によって権限を委譲された特定人員が使用する保守用取扱説明書は、当該特定人員が理解する一つだけのEU共同体言語のものを提供すればよい。取扱説明書は、以下に規定する原則に従って作成されなければならない。

1.7.4.1一般原則(General principles for the drafting of instructions)
(a)取扱説明書は、一つ以上の公式なEU共同体言語で作成されなければならない。「原文の取扱説明書」の言語は、製造者またはその正当な代理人によって立証された言語版で出版されなければならない。
(b)機械類が使用される国の公式なEU共同体言語の「原文の取扱説明書」がない場合には、それらの言語への翻訳版は製造者またはその正当な代理人によって、または当該機械類を問題の言語領域に持ち込む者によって、準備されなければならない。その翻訳版には、「原文の取扱説明書の翻訳」の文字を記載しなければならない。
(c)取扱説明書の内容は、機械類の意図する使用を扱うばかりでなく、すべての合理的に予見可能な誤使用についても配慮するものでなければならない。
(d)非専門操作者による使用も意図されている機械類の場合、使用される取扱説明書の作成および割付は、そのような操作者であることから、合理的に予想できる一般的な学歴及び理解度のレベルも考慮しなければならない。
和訳引用:資料作成国際安全衛生センター

 

取扱説明書は、形式を指定していません。 しかしながら、使用者が電子媒体で提供された、またはインターネットで利用可能になった取扱説明書を読む手段に必ずしもアクセスできるとは想定できないため、「基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) 」では、紙の形式で提供する必要があることが一般的な常識としています。 ただし、指示が電子形式、インターネット、および紙の形式で利用できるようにすると、使用者は必要に応じて電子ファイルをダウンロードし、取扱説明書の紙のコピーの復元ができるため有益な方法になります。また、 この方法により、必要に応じて指示の取扱説明書の更新も容易になります。

取扱説明書の「基本的な健康と安全の要件 Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) 」つまり安全に関わる部分は、原則として、EUの公式言語で提供しなければなりません。これは、市場に出されたり、使用されたりする加盟国の公用語です。
機械には、「原文の取扱説明書」、つまり、製造元またはその委任代理人によって検証された取扱説明書を添付する必要があります。日本の企業の場合は、通常英語になります。それに加え、機械が設置されている加盟国の言語で「原文の取扱説明書」が利用できない場合には、機械に、「原文の取扱説明書」と「原文の取扱説明書の翻訳」の翻訳を添付する必要があります。後者の要件の目的は、翻訳の正確さについて使用者が疑わしいと思ったときに「原文の取扱説明書」を確認できるようにするためです。
一方、製造者が指定する専門家のみを対象とした取扱説明書は、必ずしも使用国の言語で提供する必要はなく、その専門家が理解できる言語で提供することができます。しかし。注意すべき点は、この例外は、使用者や使用者が委託する保守担当者によって実施される保守操作の取扱説明書には適用されません。したがって、取扱説明書には、製造者または製造者が指定する専門家のみが実行する保守操作を明確に指定しなければなりません。

 

MSDコンサルティング